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香料ジアセチルと致死性疾患の関連

29-Nov-2007





IUFは、11月6日に世界の政府規制当局に食品香料の化学物質 ジアセチルの使用監督に関する緊急行動を要請するプレスリリースを出した。ジアセチルと重症肺疾患である閉塞性細気管支炎の関係が実証された。食品産業でジアセチルに曝露した労働者がこの疾患に冒されている。

このIUFブリーフィングは、ジアセチルと閉塞性細気管支炎の関連の証拠の概要を伝え、行動要請で締めくくるものだ。IUFは、また加盟組合に職場におけるジアセチルの使用に関して、また加盟組合のジアセチルの経験に関して調査を行っている。

ジアセチルとは何?

ジアセチルは、分子構造C4H6O2の化学物質で、指定ブタンジオンあるいは国際純正及び応用科学連合(IUPAC)の標準名称では2,3-ブタンジオンと呼ばれる。ジアセチルは、ある種の発酵過程で自然発生するために特定のビール、ワイン、乳製品に含有される。

深刻な健康問題となっているのは、自然発生するジアセチルではなく、人工香料としてのジアセチルの使用である。何十年にも亘り、人工合成のジアセチルは、食品香料として用いられてきたが、特定されることはほとんどなかった。単一でまた他の化学物質と組み合わせて、人工バター風味を出すために使用され、特定される場合は、人工風味、人工バター風味と製品表示されるのが一般的だ。製造労働者は、通常、黄色い液体のジアセチルを様々な生産の調合段階で取り扱うが調合物の蒸気を吸いこむ危険を伴う。

どんな製品にジアセチルが使用されるか?

人工合成ジアセチルは、冷凍食品、スナック食品(電子レンジポップコーンやポテトチップス、コーンチップスなども)菓子、焼き菓子、プロセスチーズ、サワークリーム、カテージチーズをはじめとする乳製品、商業用ベーキングミックス、アイシング、サラダドレッシング、ソース、マリネード、その他の加工食品や飲料製造における食品香料として広範囲に使用されている。

ジアセチルとポップコーン労働者肺'

アメリカで今やポップコーン労働者肺として広く知られる重症肺疾患である閉塞性細気管支炎とジアセチルが関連があるという証拠がますます多く上がってきた。この疾病は、急速に細気管支、肺の最も小さな気道を破壊し、この結果、呼吸機能が極端に制限される。これは、衰弱し、悪化し、治療不可能な、潜在的に死に至る病気である。唯一の治療法は、肺移植である。食品労働者は、製造過程で蒸気、飛沫、ちり、ほこりの形のジアセチルに曝露される危険がある。

証拠

最近になって、ジアセチルは、他と比べて高い濃度のものを使用する電子レンジ用バター風味のポップコーン製造で、職場の深刻なリスクとして認識されてきたが、潜在的に致死性肺疾患である閉塞性細気管支炎との関連の可能性は、米国国立労働安全衛生研究所が1985年に最初に示唆している。製パン会社に食品と香料を納入する業者の調合室で働いていた労働者が、仕事を始めてから短期間で潜行性の閉塞性肺疾患にかかった。
(この研究は以下のサイトで見ることができる http://www.defendingscience.org/case_studies/upload/NIOSH_1985_Intl_Bakers.pdf)

ドイツの化学会社BASFの1993年のテストでは、実験用のねずみにジアセチルの蒸気を吸入させると、一定濃度以上で4時間の曝露1回で死に至る結果が出ている。この研究は、当時発表されなかったが、この結果は以下で見ることができる。
http://www.defendingscience.org/case_studies/upload/BASF-Study.pdf

米国国立労働安全衛生研究所も大体同様の結果を2006年の研究で達成した。

2000年に米国国立安全衛生研究所(http://www.cdc.gov/niosh/)は、電子レンジポップコーン生産工場の136名の労働者を調査し、全国データーと比べて労働者の慢性の咳、息切れは、2.6倍、医師の診断を得た喘息と慢性気管支は、2倍であることを発見した。全体に気道閉塞は、3.3倍で、全く喫煙経験のない労働者に関しては10.8倍だった。電子レンジポップコーン製造に直接関っている労働者は、骨の折れる作業での息切れ、仕事を始めてからの皮膚のトラブルが工場のほかの場所で働く労働者より高かった。ジアセチルの累積的な曝露推定の四分位数と気道閉塞の頻数と程度の間に強い相関があった。

結果:肺疾患と肺機能異常が高率であることおよびこの労働人口の曝露と結果の関係は、恐らく揮発性のバター風味原料の吸入によって職業病の閉塞性肺疾患を生じたことを示唆している。(この結果は、ニューイングランド医学ジャーナルに掲載されている。ここで見ることができる。http://defendingscience.org/case_studies/upload/Kreiss-et-al-Study.pdf)
この研究対象のポップコーン労働者4名は、肺移植のための被移植者リストに載せられた。
これ以降行われた電子レンジポップコーン工場に関する研究で、調合と包装部門で人工バター風味(ジアセチルを含有する)の蒸気に曝露した労働者が多く職業病の肺疾患を患っていることが判明した。また、品質管理のテスト部門で空中の高濃度のジアセチルが発見された。

研究が広げられると、調味料・香料製造部門でより多くの閉塞性細気管支炎の犠牲者が判明した。このうちの一人は、ドッグフードの調味料工場に雇われていた。2006年以来、労働安全衛生局カリフォルニア部門(Cal/OSHA http://www.dir.ca.gov/dosh/dosh1.html)は、8名の固定閉塞肺疾患を患う調味料・香料工場の労働者を見つけた。彼らのほとんどが閉塞性気管支炎肺である。他に22名が通常以下の肺機能で、おそらくこの病気の初期段階だろう。

新しい研究で、ジアセチルが閉塞性細気管支炎を引き起こすバター風味の特定原料であることが明確になったが、同時に安全衛生の専門家は他の潜在的に有害な人工原料を警戒するようになった。最近のオランダのジアセチルを生産する化学工場(企業名なし)の労働者に関する研究は、ジアセチル生産におけるある物質の曝露で化学プロセスオペレーターに閉塞性細気管支炎シンドロームを引き起こすようで、これは、川下の食品生産におけるジアセチルの疑わしい役割と同様であると結論を出した。

カリフォルニアで続けられているジアセチルに関する研究で、少なくとも30の製造工場でジアセチルが原料に使用されていることが判明した。しかし、全国データーベースもなければ、ジアセチル使用食品会社とその製品ブランドに関する包括的なリストもない。IUFが最近コンタクトを取った欧州の香料芳香料協会は、ジアセチルを使用する製造業者の名前と住所、ジアセチルを含有する製品ブランドの開示を拒否した。

ジアセチルは、労働者の曝露という点から評価されたことがなく、ジアセチル特定表示、使用・取り扱い要件がないために、ジアセチル関連の肺疾患がどの程度か分かっていない。わかっているのは、米国でジアセチル使用製造者に対して労働者から起こされた裁判が150件以上あり、研究者は、引き続きジアセチル曝露に関連する新しい閉塞性細気管支炎のケースを見つけているということだ。

症状診断

閉塞性細気管支炎の症状は、喘息か慢性閉塞性肺疾患(たとえば気管支炎あるいは気腫)によく誤診される。病気の初期には時にして症状がなく、またこの病気の進行が非常に早いので、どんな程度であれジアセチルに曝露する可能性のある労働者は、総合健康診断と定期的な継続健康管理を受けることが非常に重要である。閉塞性細気管支炎の呼吸器系の症状としては、ぜいぜい息をする、息切れ、咳(通常、空咳)などがある。ジアセチルで目や皮膚に炎症を(薬品火傷さえも)生じることもある。

職場におけるジアセチルに関する組合行動

米国の3つの大手の電子レンジポップコーン製造業者が製品からジアセチルを排除したことは、より安全な代替物が現在入手可能であることを示唆している。IUFは、安全曝露基準(もしそのようなものがあるのなら)が確実に設立されるまで食品香料のジアセチルの即刻禁止を提案する。安全な代替物が入手可能なので、ジアセチルは使用すべきでない。

空中のジアセチルの濃度は、監視されなければならないし、曝露の可能性のある労働者に定期的健康診断を行なわなければならない。これには原料の取り扱いから関連の加工と包装のすべての段階を含むべきである。必要な場合は厳格な機密扱いで、組合代表に健康診断と職業衛生監督の結果を提供するべきだ。

暫定的安全措置として、組合は、全ての製造過程に、閉鎖生産方法の使用、ジアセチルの開放容器の取り扱いおよび曝露の排除、全職場に排出換気(圧縮空気ではなく)使用の全面的換気と定評のあるガスマスクの使用を要請しなければならない。皮膚と目の全面保護も必要だ。
しかし、厳格な職場危険分析と医学研究を基礎とする曝露基準がなくては、どんな個別の保護装置も適当ではないと強調しなければならない。

あなたができること

IUFは、食品加工部門に組合員を持つすべての組合に次のことを要請する。