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不均等の固定化:企業が派遣労働に関するEU指令に杞憂せずに、かえって好むようになった理由

10.11.11 News
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企業と派遣事業者は共に、10月にイギリスで国内法化された派遣労働に関するEU指令の日和見主義的条項から利益を得ており、すでに悪影響が出ていると、IUF加盟組合ユナイトが報告している。

派遣労働者は、連続12週間雇用された後、賃金と全部ではないが一部の手当(解雇通告、解雇手当、年金に関しては均等処遇ではない)を同等に受けるべきという要件を巧みに回避するために、会社と派遣事業者はこれらの労働者を派遣事業者の常用従業員にするよう、協力し合っている。

『スウェーデン型適用逸脱』と呼ばれるモデルの下で、派遣事業者の常用労働者は派遣労働者とはみなされない。会社に言わせると、この運営は「柔軟性」の需要に「相乗効果」を生みだす。だがこの相乗効果は、派遣先企業に大幅な経費節減を生み出し、派遣事業者に労働市場の植民地化を拡大させるものだ。

例えば、ビール会社のカールスバーグではロジスティックス部門の派遣労働者は全従業員の約15%に制限されると、ユナイトは理解していた。しかし会社はこの割合が上回っても、状況の見直しのために組合と協議せずに、すべての派遣事業者に臨時労働者を「常用労働者」に変えるように指示した。同時にカールスバーグは、新規採用者の初任給を既存従業員の賃金の80%にして、1年後に90%にするという文言を労働協約に盛り込もうとした。ユナイトが2年後には100%にすることで合意しようと精一杯の努力をしたにもかかわらず、カールスバーグは、協約締結を拒否した。ここでいう「相乗効果」とは、増え続ける直接雇用労働者の低賃金と、増加する派遣労働者の均等条件を制度的に否定することだった。

『適用逸脱』は、既に小売部門で広がっている。大手スーパーマーケットのテスコの広報担当者は、1024日にフィナンシャル・タイムズに対し次のように述べた。「適用逸脱は派遣労働が競争力と柔軟性を持ち続ける手段として、派遣事業者によって経済界全体で広く使われている。このアプローチは政府、英国小売業組合、英国産業連盟によって認められている」。しかしここには、派遣事業者のクライアントがこの慣行を奨励し実施する役割についてのコメントが欠けている。

1026日、フィナンシャル・タイムズは、ある派遣会社が25,000名の派遣労働者のうち8,000名を常用契約に変更したと報道した。この中には、ジャガー・ランド・ローバー車組み立て工場に部品を供給するDHLで働く者も含まれている。この組み立て工場のユナイトの組合員は、週に最大200ポンドを失う協約に署名するように圧力をかけられていた。

そして1031日、モリソンズ・スーパーマーケット・チェーンの広報担当者は、食品産業のインターネット刊行物「ジャストフード」に、次のように語った。「我々と取引している派遣事業者は、この規制に如何に従うかしばらく考えていた。彼らは事前対策としてこのモデルを考慮したり、彼らの労働者を既に雇用したりしている。派遣業者のネットワークを通じて、モリソンズには、『スウェーデン型適用逸脱』と呼ばれる契約で派遣事業者に雇用される派遣労働者が提供されるだろう」。『適用逸脱』されたモリソンズ労働者は、ロジスティックス部門と食品製造部門の両方に使われている。

二重協定を持つ会社がますます増え、『適用逸脱』を免れたとしても、均等待遇かどうかの評価の基準になるのは、最低賃金水準又はそれを僅かに上回る水準の初任給と、少しの或いはまったくない手当だということに、派遣労働者は気づくだろう。

ユナイトの食品飲料タバコ部門の全国役員のジェニー・フォンビーは、「従来、派遣労働は、派遣先企業で常用雇用を得る足がかりであると見なされていたが、この動きによりおそらく2層の常用労働の構造が作られるだろう。多くの不安定労働者の状況を改善するための手段として皆が期待していた労働者派遣規制が、皮肉にも低賃金と最低条件を固定化させた」と発言した。