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ネスレの『新しい現実』は、以前の現実とそっくりだ―金を搾り出すために労働者を締め付ける

27.03.12 News
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定例の『株主の皆様』宛てのメッセージで始まる最近出されたネスレ2011年度会社報告書は、冒頭から株主に『新しい現実』を喚起して、読者(いずれにせよ専門用語と客観的な数字の見出しを飛ばし読みする人々)を引きつけようとしている。しかし、労働者にとって、この新しい現実は、投資家の配当金の現金を生み出すために権利が攻撃されていることとほぼ同様だ。

ネスレによると『新しい現実』は、政治動乱、経済の不確実性、先進国市場の成長の不活発さ、商品や通貨や株式の市場の高い変動性により特徴づけられるが、また同様に、新興市場の力強い成長、増加する豊かさ、技術とデジタル通信の顕著な変化、新市場と消費者に到達する新規の方法、そして現実の消費者の増加に特徴づけられる。

数字を詳しく見て、為替を調整すると、ひとつの主要な分野に強い成長が見られる。すなわち、配当金支払いである。ネスレは、『株主の皆様』に配当金を1.85スイスフランから1.95スイスフランに5.4%増加する提案をしている。4月の株主会議で株主は、もちろんこの提案を歓迎した。2010年に配当金は1.6スイスフランから1.85スイスフランに大躍進したが、これに続くものだ。これに、ここ数年の株式買戻しの何百億を加えると、ネスレは、他の何よりも早く現金を還元していることは、明らかだ。

ファイナンシャルタイムズの記者は、2月16日に「ネスレ:その包み紙をはがす」という鋭い題の記事の中で、「昨年、事業から上がった現金は、売却処分の影響を除くと5分の1減少した」ことを指摘した。ネスレは、配当金増加を強調しているが、今や、配当金は事業キャッシュフローの60%に当たり、4年前の2倍になっている。これは力強い成長の原動力だ。グッドフード、グッドライフ、グッドな配当金。

ネスレの拡張の特徴は、国際労働基準を含む国際基準の遵守実施に厳格とは言えない規制と法律環境を柔軟な適用することである。会社報告書は、読者にネスレが国連のビジネスと人権の枠組みを承認していることを伝えている。しかし、実際のところ、ネスレに選択の余地はない。この原則は、OECD多国籍企業ガイドラインに含まれているのだから。「我々の人権デュー・ディリジェンス・プログラムは、リスクアセスメント、インパクト評価、トレーニング、モニタリングを含む。これは我々の人権作業グループにより調整が行われている」

この目立たない作業グループは、仕事がなければ賃金なしで、何年も僅かな賃金と手当てで直接従業員と同じ仕事を行う何百名もの臨時労働者(会社は彼らを契約者と呼んでいる)の卑劣な搾取の上に築かれたパキスタン、カビールワラの乳業生産制度を見落とした。人権リスクアセスメントは、これらの労働者が合法的な権利を実施したために会社が彼らを解雇した時、裁判所命令を何度も無視し、違反した時、労働者の会社に対する合法的な主張を警察の告訴によって犯罪化した時、明らかにリスクを見なかった。

何年にも亘り、インドネシア、パンジャンのネスカフェ工場のIUF加盟組合は、彼らの賃金を交渉する権利を否定されてきた。昨年、会社は、やっと団体交渉に賃金交渉が含まれることをしぶしぶながら認めた。交渉が決裂して、組合がストライキを行うと、経営者は、一方的に制裁で53名の組合員を解雇した。ストライキ終了の合意書が署名され、労働者が職場に戻った後にである!

 

ネスレの人権リスクアセスメントは、これらの問題や他の長期の悪弊に気付かず、また本社に問題が持ち上げられても悪辣な経営者の回答に満足しているのは明らかだ。ネスレの労働者にとって、新しい現実は、以前の現実と同じである。現金を絞り出すことは、権利を締め付けることだ。

ネスレシステムの中に一体どれだけ多くの同じような人権リスクが潜んでいるのだろうか?答えを出すには、人権作業グループやネスレの内部監査を見てはいけない。投資家は、もっと良く見るべきだ