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ナノテクノロジー:レーダーの届かないところで拡大

17.06.14 Feature
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IUFが長年協力してきた市民社会団体ETCグループ(元RAFI)による、新たな食品・農業技術とその影響に関するシリーズ記事第3段を発表する。

原子及び分子レベルで自然並びに人工原料を操作するナノテクノロジーに投資している企業らは遺伝子操作の討議から学び、彼らの研究と新製品の商業化に関する発表を控えてきた。それでもフランス政府は市場に3,400種類以上のナノテク製品があると推定し、アメリカの特許事務所は申請数が2年ごとに倍増しているのを見ている。2004年、非常に高価なカーボン・ナノチューブの生産は54社合わせてもたったの65トンだったが、現在その価格は大幅に下がり、企業は単独でも年間300500トンの生産が可能となった。EUの報告によれば、毎年およそ30万トンのナノ粒子が成層圏、地下水面及び埋立地に放出されている。

ナノに関して重要な事は、ナノスケールまでに縮小された粒子はより大きな表面面積を持ち、それにより化学的により活発になり、その特徴はサイズと共に変化し続ける。それがナノテクの魅力であり、またリスクでもある。

ミクロあるいはマクロスケールで不活性な物質は、ナノスケールで危険な特徴が想定される。従ってナノ粒子はそのサイズの長所によって高まる毒性の潜在力を含む。2000年にナノに関する勢いが始まったとき、信頼できる健康あるいは環境のリスクマネジメント研究は限られていた。それから14年経った現在でもその研究件数はあきれるほど少ないが、それらのほとんどが労働者や消費者に対するリスクを警告している。ナノマテリアルの人体への曝露や職場の内外でのプロセスを限定、管理或いは測定する方法はまだ見つかっていない。世界第2位の再保険会社(つまり保険のための保険発行者)SwissReは、このリスクは保険を掛けるには高すぎると主張する。

ナノは食品及び農業では小さいかもしれないし、そうでないかもしれない。現在、商業化は当初の潜在的な市場成長の誇張された推定を下回っている。過去10年間、清涼飲料から板チョコレートまで全てのものへのナノ粒子の処方を自慢してきた大手企業らは沈黙を続けている。しかしそれは、彼らが積極的でなかったという意味ではない。企業は3000件以上のナノ農薬の申請を行っており、産業筋はEUREACH規制の副作用として、現行の農薬の約15%が市場から追放され、安全と推定される残りの農薬のナノ処方に至っている。

少なくとも一つのヨーロッパ援助機関が、モロッコとコートジボアールの学校給食プログラムの栄養素添加物とフィリピンの米のミクロ処方(報告の一部はナノ処方となっている)を検査した。USAIDは、オランダの企業が開発した食料援助と種子を乾燥させておくためのセラミック製のナノ細孔ビーズを検査した。

2007年、IUFETCと共に、ナノテクノロジーの健康と環境に対するリスクが徹底的に査定されるまでナノテクノロジーの世界規模の禁止措置を求めた。それは起きなかった。何れにせよブリュッセルから北京の規制機関は懸念しており、ほとんどのナノ毒物学者がそのリスクの甚大さを確信している。ナノテク研究に何百億も費やし、日焼け止めや化粧品から食品添加物、農薬に至るまで3000種類以上の製品が市場にあふれてしまった中、政府はどう対応するのか?うずくまってしまうのか?

遺伝子操作とターミネーター種子あるいは合成生物学に関する討議とは違い、ナノテクは明確な政府間の本拠地がない。リオ+20で諸国政府は、新技術の予期せぬ影響から市民を守るグローバルと各地の技術監視メカニズムを設置するよう国連に要請した。リオ以降、国連はあまり動いておらず、技術監視施設については未だに議題に残っている。G-77と中国、特にアフリカとラテンアメリカ諸国は新たな持続可能開発目標の分野横断的貢献として技術査定を強く求めている。

国連で何も確立していないので労働者と消費者のニーズに対処しなければならないが、技術査定フォーラムは社会運動及び市民社会組織がグローバルな認識と国・地域レベルの行動を触媒させる場となりえるだろう。組合はこの要求を支持するべきである。