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インドネシアの民主主義を守る

27.10.14 Editorial
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1998年にスハルト軍事政権が崩壊して以降、インドネシアで民主的に選ばれたジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領の10月20日の就任式は、民主主義にとって最も重要な勝利となった。その重要性は、7月に誰が大統領選挙に勝利したかではなく、実は誰が負けたかにある。選挙に負けた元軍高官プラボウォ・スビアント氏の政治基盤は、民主主義がインドネシア国民にとって不十分且つ不適切だとして愚弄し、新たな新体制として強権政治への回帰を約束していた。その言葉通り、プラボウォ氏の選挙運動の一環として、インドネシアを抑圧的な軍事政権下で32年間支配したスハルトの写真が彼のポスターに使用され、国中で見かけられた。

プラボウォ氏自身(スハルトの娘婿)、1998年に人権活動家の誘拐・失踪に関わったり、東ティモールでの大虐殺を指揮したりと、深刻な人権侵害の経歴を持つ。このように人権侵害の経歴を持ち、民主主義を破壊し、独裁主義の復活を公然と掲げたにもかかわらず、インドネシアの複数の大規模な労働組合は大々的に彼を支援した。これらの労働組合は、人権問題が組合の課題でないと軽視し、プラボウォ氏への支持を正式に宣言し、16年前にスハルト独裁政権が終わって以降、インドネシアの労働組合運動にとって最大の危機を招いた。これらの労働組合の中には、国際組織に加盟する国内最大の産別組合も含まれていたため、国際労働運動にとっても危機を招くことになった。

7月、プラボウォ氏が落選すると、これらの労働組合は選挙結果に抗議するために何万人もの労働者を動員し、ジョコウィ政権打倒を宣言した。ジョコウィ氏は低所得家庭に無料の医療や教育、最貧困地域社会に対する社会的支援、公共交通機関や公務サービスの回復、及び政府内の汚職の一掃を含む革新的な社会政策を掲げたにも拘わらず、このようなことが起きた。最も重要な事は、民主主義を守り、それを有利に働かせるという、ジョコウィ氏の明確なコミットメントである。しかし労働組合は正にこれに反対して動員を行った。プラボウォ氏が選挙結果を上訴し、選挙委員会がようやくそれを拒否すると、彼は直接選挙の廃止を訴え、代わりにスハルト独裁政権時に行なわれていた政治的任命制度の復活を唱えた。すると再び、特定の労働組合が民主主義を弱体化させるこの攻撃を支援する集会を開いた。

これと対照的なのは、香港の民主主義を守る闘いを勇敢に繰り広げる何十万人もの人々が直接選挙権を要求していることである。香港労働組合総連合(HKCTU)は9月29日、ゼネストを呼びかける中心的役割を演じた。IUFはこのストライキに参加し、民主主義を支持する我々のメンバーを大変誇りに思う。

インドネシアでプラボウォ氏の支持を正式に宣言し民主主義に反対するため、動員した労働組合グループに入らなかった我々のメンバーを誇りに思う。もし入っていたら、IUFの原則と価値観と真っ向から対立することになり、除名されていただろう。独裁者やその立場を狙っているような者を支持する組合の居場所など、IUFにはない。2012年、IUFは第25回世界総会で、「我々の生活を形作る経済勢力に対する意義ある民主的支配の政治を回復させ」、「それぞれの国で中核的政治及び民主的な権利を確立することを未だに模索している人々と一緒に闘うため」、組合が組織化する必要性を再確認した。これは決議ではなかったが、我々の全目標が労働組合運動のよりどころとする民主的制度を再構築し、守っていくための緊急要請だった。まさにこれが、香港のIUFメンバーが民主主義を支援するため街頭運動に参加し、インドネシアのIUFメンバーが独裁政治を支持するための街頭運動に参加しなかった理由である。

インドネシアの闘いは終わりからはほど遠く、ジョコウィ大統領は新体制独裁政権を復権させようとする政治的並びに軍事的関係者から、今後も難題を受け続けるだろう。インドネシアの真の労働組合は、これらの脅威に直面する民主主義と民主権を保護するために闘い続けなければならない。そして我々は、世界中から彼らを支援しなければならない。