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ギリシャで現状打破?緊縮政策と連帯

15.01.15 Editorial
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ギリシャで125日に総選挙が行なわれるが、債務再編と緊縮政策の中止をずっと呼びかけてきた左派政党シリザが優勢となっている。IMF/欧州委員会/欧州中央銀行の「トロイカ」はシリザが政権を握る「脅威」を警告していて、柔軟な政府の再選に追加の金融支援を行うと、ギリシャの与党連合の支持を強く示している。シリザが勝利すれば、ヨーロッパをはじめ世界の財政緊縮政権の苦しいかじ取りに脅威を与えるのは間違いない。そのため彼らを歓迎し、積極的に支持するべきである。

IMF/EU/欧州中央銀行の「トロイカ」はこの4年間、ギリシャの銀行及び国庫を支援する条件として過酷な緊縮財政計画の継続を同国に強要してきた。トロイカの要請で、最低賃金は22%低下し、25歳以下の労働者の最低賃金は32%下げられた。団体交渉は国際法およびEU法に真っ向から違反して、破壊された。公的サービスも骨抜きにされ、基本的医療でさえ不足している。経済的生産は危機前のレベルより25%低下したが、通常この破滅は戦時のレベルである。労働人口の4分の1が無職で、若年層に至っては50%以上が失業している。栄養失調と幼児の死亡率が上昇している。

当然ながら緊縮財政になってからギリシャの債務返済能力は悪化するばかりで、GDPに対する公的債務の比率は2010年以降34%以上も上昇し、現在制御不能な175%である。ギリシャは国家の債務を返済する資源が全くなく、IMFでさえ不本意ながらそれを認めている。また、緊縮政策によるデフレにユーロ圏が陥ることが問題を悪化させる。しかしIMF/EU/欧州中央銀行の「トロイカ」は、社会的及び経済的打撃を大規模に与え続け、大虐殺の継続を主張している。

これらすべては予見できたし、これまでにいつでも修正変更ができたはずだ。危機の初期段階で持続可能な債務再編と公的投資の増加を合わせて行っていれば、この痛みのほとんどを回避できたし、それはギリシャ以外でも避けられたはずだ。公的歳出を縮小しても、決して国の景気後退を避けることにならない。輸出の競争力を高めるため賃金を下げてコストを縮小した「国内の切り下げ」は、ギリシャの債務危機の妥当な解決策では決してなかった。国内の貿易赤字は改良されたが、それは消費が激減した結果、実質的に輸入が低下しただけだ。

もし「トロイカ」が同様の政策をギリシャ以外にも強要すれば、それは彼らが達成しようとする政治的プロジェクトがあるからだ。つまり公的サービス、組合の力、生活水準及び法人税を各地で下げることである。そうなれば民営化が財政の穴埋めとなって入り込む。

緊縮政策は、マクロ経済の不十分な支配の産物でも、社会対話の失敗でもない。それは、企業の力を拡大するための意識的な計画である。この計画は途上国で何十年も実施・改善されてきており、どこでも同様の破滅的結果になっている。

EUは、2008年の金融危機の後エストニアとラトビアにじめて過度な金融政策を強要した。不安の増加と危機の連鎖が何十年も続いたにもかかわらず、弱体化した労働運動は危機に対応できず、左派の一貫した対応を明確にできず、推し進める用意がなかった。労働党及び社会民主政党らは長期間に渡り新たな財政・政策的正当性を主張するのに加担し、むしろ積極的な参加者となっていた。スウェーデンの銀行を救済するためにバルト諸国の経済が荒廃した時も、スウェーデンではほとんど議論が起きなかった。これらの国々の労働者は実質的な支援もなく、自活に追いやられた。

 効果的な反対もほとんどなく、欧州の緊縮政策は拡散した。最初にギリシャ、そしてスペインとポルトガル、さらには北に広がった。同時に緊縮政策の拡散は、ますます過激な人種差別と、現状の危機に安易な答えを与える外国人嫌いの右派に進路を与えた。

シリザは民衆の反感の高まりから生まれ、その反感は推進されるべきである。しかし125日の選挙に勝利しても、すぐに広範な財政対立を生むだろう。シリザ政党が連立政権の設立に成功しても困難は始まったばかりで、それを阻止する大きな圧力がうまれる。債務救済の交渉は非常に困難で、ギリシャは選択肢もなくユーロを止めざるを得なくなるかもしれなく、大規模な資本闘争を引き起こす。圧力は、今年の後半に選挙が予定されているスペインとポルトガルにもたちまち及ぶだろう。シリザのように、スペインで優勢なポデーモス党が希望の媒介となる。

ギリシャの選挙は現状打破の可能性を与えるが、左派政権が彼らの計画を実施するには、海外から大規模な理解と支援が必要である。組合はその支援を構築する最前線に立つべきだ。