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ギリシャ危機でいったい何が問題になっているのか?

10.07.15 Editorial
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緊縮財政に対する民主的な代案の不安でヨーロッパに暗雲が立ち込めている。ギリシャ政府の急進左派連合(Syriza)がその代案を具体化しようとしているが、これが理由で、それが呈する問題を追い払うために欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)がIMFと連携している。いくつかの例外を除いて、説得側の政党は反急進左派連合を、それとなく、あるいは積極的に支持している。

1月の選挙で勝利して以来、急進左派連合は、戦時下並みの経済的・社会的破壊レベルを引き起こした、前政権が強いた破滅的緊縮財政からの救済を交渉してきたが実を結んでおらず、回復が先送りされ、債務の負担も増加した。

ギリシャ政府は緊縮政策を終わらせると選挙公約に掲げたものの、入手可能なキャッシュを全て国中から探し出し、予算の黒字化を達成するため支出を切り詰め、債権者に返済もしてきた。欧州委員会・ECBIMF(以前はトロイカと呼ばれていたが、現在は「機関」として知られる)はこの長期化する危機に対する唯一の現実的解決策、つまり債務の減額は交渉のテーブルにはないと当初から明言してきた。ギリシャ政府は忍耐強く交渉を続け、さらに何十億ユーロをも吸い上げる破壊的な救済措置の継続にも合意したが、彼らの提案は拒絶、軽視、侮辱された。

「機関」は皮肉にも、予想される大規模な経済崩壊のあらゆる責任を拒否している。最も脆弱な国民に基本的な栄養と電気供給の継続を保証する政府の限定的な措置は、受け入れられない「単独行動主義」として非難された。多国籍企業のタックスヘイブンとしてルクセンブルグを含めると以前対比的な主張をしていた欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長にとって、ギリシャの税金に関するどの提案も十分に逆累進的でない。団体交渉と社会保護の骨格制度を維持する政府の提案は繰り返し非難された。ECBは必要な最低限の緊急換金性に言及しながら、圧力を維持するためにギリシャの銀行の借り入れを制限することで資本の逃避と銀行運営を画策した。

そして「機関」は、75日に救済条件に関する国民投票を行う同政府の決定に対し、ギリシャ経済を撃沈する新たな措置を取り始めた。その目標は、銀行及び所謂技術系出身官僚(非常に政治的な人たち)によるルールを強化させ、財政力に挑むなど想定しないようギリシャ国民に思わせることである。

真実は単純に、緊縮財政と呼ばれる社会的残虐性は、それが表向きにもたらすとされる結果は、決して生まれないと言う事だ。

交渉は決して経済に関するものではなく、政権交代に関することで、ヨーロッパの他国への政治的感染の可能性を排除するためである。

1953年、ドイツへの債権者はロンドン会議で、戦前のドイツの多額の債務の半分を帳消しにし、ドイツは貿易の余剰金による支払い能力に応じて残金を支払うと言う事に合意した。しかし余剰金も支払いもなかった。ロンドン合意は政治的なもので、冷戦の中ドイツの立場を強化するのが目的だった。ギリシャの左派政権を弱体化させる決定も同様に政治的なものである。この6カ月間の交渉の間、ヨーロッパがギリシャのデフォルトとユーロからの離脱を乗り越えられると繰り返し、絶え間なく表明されてきたことが覆される可能性がある。ヨーロッパはギリシャの債務の相当な額を減額できるし、実際みんなにとってその方が有益である。しかし「機関」は政治的レッスンをギリシャだけでなく、他にも伝えると決意している。

交渉を通じて、ギリシャ政府はその立場を忍耐強く、時には雄弁に守ってきた。前代未聞の不況の疲弊から労働者、年金受給者及び貧困層を守るための限定的な措置の提案は、30年前の最も控えめなケインズ主義に見えるだろう。それらがヨーロッパの秩序に対する脅威として現在非難されていることは、その秩序に関して、また欧州ならびに世界の政治の潜在的危機について我々に語っている。急進左派連合の選挙の勝利は、現状に異議を唱える左派の広範な運動力の可能性を示している。急進左派連合が闘い続けるために連帯はかつてないほど重要である。組合は連帯を組織するべきである。