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貿易協定やTPPによる企業の権力掌握に抵抗し続けよう!

03.02.16 Editorial
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8年越しの秘密裏の交渉を経て、12か国の政府(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ、ベトナム)がニュージーランドで24日、環太平洋パートナーシップ協定に署名する。条約文書は昨年の11月にようやく開示されたが、企業が目標設定をむき出しにしていたため、その一部が曝露されてから、そしてそれ以前から協定の評論家たちが議論していた事を裏付けている。TPPの最終版は、企業が望んでいたもの、つまり「民主主義を脅かす貿易協定」を獲得したことを示している。

 

TPPは、投資家として彼らの「期待」を満たさない如何なる法律、規制、裁判判決や行為に対し、非公開の調停裁判で政府を訴える「権利」に盛り込まれた多国籍投資家に与えられる全面的な新しい権力、つまり投資家対国家の悪名高い争議調停手続き(ISDS)を承認している。同様の貿易及び投資協定の下、有毒化学製品の製造・輸送及び廃棄管理の禁止・規制、土地や水源の管理ライセンス、代替エネルギーの推進、水道及び電力サービスの価格設定、公的債務の再構築、有害な農薬の廃止、食品安全基準の維持、企業が販売する製品の適切なラベル表示義務などに関し、政府の権限に異議を唱えるために、ISDSは企業にうまく利用されている。

 

TPPはこのメカニズムの最も毒性の強い特徴を盛り込んでおり、株式、債券、デリバティブのような投機的金融手段、ライセンス、フランチャイズ、許可及び知的財産の多国籍所有者に法外な権限を与える「投資」の柔軟な定義を取り入れている。この協定はISDSの苦情範囲を金融サービスまで拡大させ、多国籍投資家に彼らの「期待」あるいは「協定の最低基準」を満たさない規制措置に異議を唱える権利を付与する。これは、2008年の金融危機の後に取られた最も控えめな措置でさえなぎ倒す、あるいはこれらの措置を大幅に改良した破壊槌であり、新たな銀行関連危機のお膳立てをしている。

 

知的財産に関する条項では、既存の著作権と特許保護の範囲を拡大させ、命を救う薬に対する政府の価格及び調達政策に異議を唱えるため、訴訟を可能にする。署名国は、全ての植物種の特許を取り、農家がこれらの種を交換することを禁じる「権利」を企業に保証する、植物新種の保護のための国際条約1991」の締結を義務付けている。その他の条項では、企業がバイオ技術に対する公的監視に異議を唱える門戸を開放し、

(特許で保護された)遺伝子操作された植物とそれに関わる農薬のさらなる拡大に対する抵抗を弱める。

 

この協定に網羅される国内サービスの規制は、それらが「適正、客観的且つ公平な形」で管理される範囲でのみ、投資家の異議申し立てから保護される。政府調達に関する条項がTPPには全くなく、署名国は「追加項目」について3年以内に交渉を開始する義務がある。

 

TPPは現在のWTO条約のルールや、多国籍投資家たちが長年獲得を目指してきた知的財産、金融サービス、食品・農業、バイオテクノロジー及びサービスを含む領域で、「WTOプラス」の地域間且つ二か国間貿易投資条約の多くの条項さえ超越する。それは公益のための法制化や規制をする政府の民主的権利を弱体化させ、それにより食料、医療及び教育の権利を含む基本的人権を攻撃する。もし批准されれば、公共投資の力を利用し、質の高い雇用を生んだり、持続可能な食料生産を推進させ、また気候変動と闘う活動を深刻に妨げるだろう。

 

規制が市場原則に従い、投資家の「期待」に応じ、「無差別」であれば、政府が公益のために規制する権利の保護を約束する文言の中に、企業の権力掌握が組み込まれている。TPPでは確かに政府は規制できるが、それは多国籍企業やその法律チームに何百万も支払う用意があればである。労働権に関する条項は、ブルネイ、マレーシア、ベトナムのわずか3ヶ国にだけに基本的ILO条約を国内法に導入するよう義務付けているが、その他の国は実質修辞的で強制不能のままである。オバマ政権が国際貿易協定としてはこれまでで最強と宣伝していた環境関連条項も、アメリカの他の国際環境コミットメントと比較して実は後退した内容である。この点に関して、民間企業にそのような全面的権限を与える条約は、労働や環境のセーフガードを通じて「バランス」を保つことはできず、条約のプロセスは署名国に全ての国内法を投資家が協定の中で主張する事に適応させるよう要請する。労働者が自分たちの議題を前進させたならば、TPPや同様の協定は改定や「改善」ではなく、打倒しなければならない。

 

組合とその同盟はTPPを阻止する絶好の機会がある。12か国の経済生産高のうち85%を占める6カ国が批准すればその条約をそれら6か国で実施できることになるが、参加国政府による批准を受け調印されなければならない。TPP反対キャンペーンはこの協定の破壊的影響の認識をグローバルで高めることに成功しており、今年のアメリカの選挙には、同国の批准手続きやその他の経済団体を取り巻く議論や不確定さが加味される。労働運動と我々の同盟はこれを機会と捉え、全面的に活用するべきだ。