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ニュージーランドのモンデリーズ工場閉鎖に対する反応で、グローバル・ブランドの上っ面が剥がされる

21.12.17 Feature
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ブランドネーム力さえあれば、製品がどこで、どのような状況で生産されるかなど問題視されないと思い込みマーケティングと生産を構築してきたメーカーだが、その「グローバル・ブランド」の輝きが剥がれ始めてきている。これまでは、消費者の忠誠が確保されていた。それを支える地元生産、地域社会、そして労働者たちの記憶は、パワー・ブランドの攻撃の下、色あせてくる。実は消費者たちが疑問の声を上げ始めているのだ。

 20172月、モンデリーズは、350名の失業を伴う、ニュージーランドのダニディンにある80年の歴史を持つキャドバリー・チョコレート工場を近々閉鎖させると発表した。そしてニュージーランド市場向け生産を、オーストラリアの工場へ移転させる計画だ。当初、「セーブ・ザ・ファクトリー」というコミュニティー・グループが工場の買収を申し出てダニディンの生産を維持しようと試みたが、入札に失敗した。しかしダニディンのチョコレート生産と質の高い仕事を救う活動は終わっていない。

イギリスの「ガーディアン」紙が次に起きたことを記事にしている。「セーブ・ザ・ファクトリー」はダニディンのチョコレート専門製造会社Ochoとチームを組んで事業を拡大させるのに十分な資金を調達するため、早急にクラウドソーシングを始めた。こうすることで元キャドバリーの労働者をはじめより多くの人を雇用でき、ニュージーランド最古の都市でチョコレートづくりの伝統を維持させようとした。Ochoのオーナー、リズ・ロウさんはガーディアン紙に、「地元での生産と地元の雇用を守っていくという強い感覚があります」と述べた。

 これでモンデリーズが許されたわけではない。同社はニュージーランドの子会社の「配当金」の支払いを求めるスキームを通じてダニディンの事業から現金を吸い取る一方、寛大な租税補助金から利益を得ていた。ここでいう「配当金」とは事実上ブランドの使用料で、これは同社の純利益を上回る額だった。各国政府は、世界各地における企業の破壊行為に提供した資金を回収するべきである。しかしOchoは地元の生産を支持する回復力と復活を証明して、グローバル・ブランドを破壊するために人々の心情をうまく活用した。

地元の労働者が必ずしも組織化されているわけではない。ニュージーランドのIUF加盟組織E Tūは、救われた雇用が組合の保護を伴う質の高い仕事になるよう努力している。そしてモンデリーズにおける質の高い雇用を救う努力は、IUF加盟組織が展開している数多くの行動を含む、より広範な国際レベルの活動の一環である。

地元の生産者に対する消費者の愛着を、単なるフワフワした望郷の念としてあしらってはいけない。それは地元の雇用、強い地域社会、公共サービスの財源となる税金基盤の生きた記憶を伴うもので、さらにそれらを取り戻す熱意も含まれる。ガーディアン紙は「支持の高まりがダニディンの人々にとって如何にチョコレートと雇用が重要であるかを示した」と書いた。ダニディンの経験は、組合が構築の基盤にできる質の高い雇用を求める労働闘争に対する支持が保持されたことを示唆する。