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ハインツ、モンデリーズ及びプライベート・エクイティーの影響

20.03.14 Feature
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食品産業に買収資本の運営法がどの程度浸透しているかを模索する、2月のニューヨーク消費者アナリスト・グループ(CAGNY)の会合の中心になったのは、プライベート・エクイティー(非公開株式投資)だった。レバレッジド買収(借り入れによる資金調達で行う買収)は2008年以前の規模・出来高までまだ回復していないが、株価暴落からかつてない規模の大型買収企業が複合金融企業として生まれ、それらは買収取引事業を企業略奪に絞っている。しかしプライベート・エクイティーは閉鎖された世界ではない。他と同様、加工食品産業においても、ファンドは数十年にわたりレバレッジド買収を通じて開発した金融工学や大胆なコスト削減を、実質上主流化させた。

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ハインツ社は昨年、ブラジルの3Gキャピタル社とウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハザウェイ社によるレバレッジド買収で株式が非公開となり、食品ビジネスの基準を定めるようになった(取引とその影響の分析は、 ハイン様々プライベートエクイティー買収参照)。3G社は、ブラジルのビール会社を容赦ないコスト削減を通じてグローバル巨大企業AB InBevに組み込み、また事実上バーガーキングから大量のキャッシュをすでに吸い上げていたプライベート・エクイティー投資家から同社を買収しさらにキャッシュを絞り上げ、不可能と思われたことを達成した。2年後バーガーキングは株式市場に戻された。

ハインツを買収して最初の年に3G社はアメリカとオーストラリアで3工場を閉鎖し、世界全体で従業員を10%以上削減し、彼らの「ゼロベース」のコスト削減予算プログラムを実施するためアクセチュア社からアドバイザーを迎え入れた。これに同産業他社が注目した。

「以前は良好に効率よく運営されていたと見られていたハインツ社から搾り取られた貯蓄の規模に多くの同業者が驚愕し、恐怖さえ抱くようになっている」と、ラボバンクのアナリスト、ニコラス・フェレディ氏は今年のCAGNY会議前のレポートで書いている。「これを受け、各社はプライベート・エクイティーの対象にされないようにするため、自社の事業を取捨選択し貯蓄に努力せざるを得ない」。

ハインツ社の財務効率(スープ・アップ利益と呼ばれる)の定評は、2006年に同社を揺さぶったトリアン・ファンズのヘッジファンド投資家ネルソン・ペルツ氏が発した圧力に端を発する。現在ペルツ氏はモンデリーズに戻り理事席を有する一方、ジャナ・パートナーズとその他のヘッジファンドがモンデリーズの株を増やしている。

モンデリーズに関していえば、3G社のハインツに対する動きに恐怖を感じるどころか、刺激を受けている。同社のアイリーン・ローゼンフェルトCEOは、この会議でフィナンシャルタイムズ紙に次のように述べた。「我々はAB InBevとハインツに対する3G社の動きを見ていてアクセンチュアと組んでいたのを知り、我々にとっても彼らは大きな力を発揮すると信じています」。またCAGNY会議でデビッド・ブレートンCFOは、「迅速にコスト削減を進めるため」にアクセンチュア社を採用したと述べた。

モンデリーズはプライベート・エクイティー効果を完璧に例示している。つまり株式公開された企業にも拘わらず、資本構造・目標及び手段においてレバレッジド買収に酷似しているからだ。債務を買収の道具に利用し、現在モンデリーズである元クラフト・フーズ社を、「グローバル・スナック巨大企業」に押し上げた。クラフトが分社化されモンデリーズができると、事実上全ての負債はこの新会社に移された。そのため未だにキャッシュフローに対する苦悩は相当なものだ。それ以来、モンデリーズは株主とトップマネジメントたちに資金を供給するためだけに新たな債務を負った。昨年、ペルツ氏のトライアン・ファンズの標的にされて3週間後には、モンデリーズは400%アップの株式買戻しを承認し、8%の増配を発表した。すでに借り入れで資金調達された財務状況でトップマネジメントの報酬のために新たな借り入れを行う事は、まさに典型的なプライベート・エクイティーの配当再資本構成のメカニズムである。長期的な視野に立った食品製造企業の中で、最近モンデリーズが発表したような利益目標を設定する企業は他にない。しかしバーガーキングの3G社やハインツのペルツ氏などの現行チームは、長期的に在籍することなどおそらく考えていない。彼らをはじめ全産業の目は今、ハインツと彼らのプライベート・エクイティーのボスにくぎ付けになっている。

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