Home

国連気候変動会議のテーブルになぜ食品がないのか?

07.12.15 Feature
Printer-friendly version

1130日~1211日にパリで開催される国連気候変動会議(COP21)に出席する政府、企業及び市民社会団体が準備する中、地球温暖化の主な影響である食料制度が未だに議題に入っていない。

気候変動が食料生産に及ぼす壊滅的な影響が明白になってずいぶん経つが、政府や多くの気候キャンペーン活動家たちでさえ、気候温暖化における食料制度の重要な役割を、充分に強調したり理解していない。そのため、食料と気候の結びつきの中核にある農業関連企業の生産方法が、まるで温暖化の解決法の一端のように誤って捉えられてしまう。そして小規模農家と共に農業労働者が地球の温度を下げられるかもしれない重要な役割を過小評価してしまう。

我々は、気温の上昇が食料の生産に直接影響を及ぼす事を知っている。強烈な嵐、干ばつ、砂漠化、植生パターンのシフト、土壌浸食、入手可能な水の減少などが、食料生産と生活をより不安定にする。

 しかし2006年、草分け的な「気候変動の経済学に関するスターン・レビュー」が、農業と土地活用(主に農業と林業)が世界の温室効果ガスの排出量の32%を占め、産業あるはセクター別に見て最大の割合だと言う事を突き止めた。スターン・レビューは、工業と運輸をそれぞれ14%とし、エネルギーを大量に使用して製造される化学肥料や農薬などは、この報告書では食料でなく工業に入れている。最近の調査でも、ほぼ似たような結果が出ている。

 農業における温室効果ガスの増加は、輸出型の化石燃料を使う単一栽培生産の拡大と集約により加速しており、気候変動コストを含む費用を外在化させている。温室効果ガスの排出量のおよそ18%を占める森林破壊のほとんどは、換金作物の単一栽培農業の拡大と関係している。大豆とパーム油は最悪の例だが、その特徴から全ての大規模単一栽培は温室効果ガスの蓄積に寄与している。

 スターン・レビューによると、「肥料が農業分野で最も多く排出(38%)している。2020年までに農業分野の排出量は約30%増加すると予測されている。・・・・予測されている排出量のおよそ半分が農地の肥料から出ると想定されている」。国連の食糧農業機関(FAO)による2014年の調査では、家畜が消化する時に出す副産物として腸内発酵のメタンが農業の全排出量の39%を占め肥料を超えるが、化学肥料の使用が農業において最も速く増加する原因で、20012011年だけで農業における排出量を37%増加させている。そしてFAOは家畜から発生するメタン排出を大幅に削減する数々の方法を特定した。

 窒素肥料の分解は一酸化窒素を生成し、それは二酸化炭素の296倍もの気候変動力を持つ温室効果ガスである。窒素肥料の流出液は、水の二酸化炭素を減らし、淡水及び沿岸地域の植物や動物を殺す藻の繁殖を進める富栄養化の原因の一つである。そして水の死が地球温暖化の起因となる。

 肥料生産は、エネルギーを大量に消費する。政府間気候変動委員会(IOPCC)は、肥料生産だけで世界のエネルギー生産の最大2%を占めると試算した。最近の「グレイン」の記事によると、大量のメタンを大気中に放出し、二酸化炭素よりもさらなる温室効果ガスであるフラッキングからの天然ガスに、肥料生産はますます依存している。

 農薬製造は、耕作に適した作物に対しエネルギーの最大16%を占める。収益の減少に対応させ農薬がより複合的かつ毒性が増すにつれ、その生産にエネルギーの使用が増えている。大量の農薬散布に抵抗できるよう改良された遺伝子操作作物の拡大により、世界中で農薬の使用が増加し、生物多様性が失われ、土壌の栄養素が破壊され、化学肥料を含む化学物質への依存を増す回転装置を回す要因になっている。

 大規模な単一栽培がより拡大するにつれ、食料制度の脆弱性が気候及び生物学的ショックに対しより高まる。これらのショックは貧困及び飢餓に苦しむ人々により大きく影響する。そしてそれらの半数以上が、賃金農業労働者や小規模農家を含む食料生産者である。

 環境的に持続可能な食料生産へ移行させる技術的な基盤は入手可能で利用しやすく、且つ安価である。エネルギーを大量消費する温室効果ガスを排出する単一栽培の代替は、小規模な混合農業、つまり複数栽培である。

 温室効果ガスの大幅削減は、複数栽培や家畜/穀物複合生産、害虫を管理し土壌に栄養を戻すための作物の輪作制などを通じてすぐにも達成可能で、同等あるいはさらに多くの収穫を上げながら、大幅に温室効果ガス排出量を削減できる。持続可能でエネルギー消費量の少ない方法は土壌の有機質を豊かにし、表土や水を保護し、適切な支援をすれば社会的かつ環境的に持続可能な農村雇用を生むことができる。

 権威ある「国連農業知識の国際評価・持続的な開発のための科学技術(IAASTD)」の2008年版によれば、

 「従来の方法による生産量と同等或いは大幅に増やしたり、農地への土地変換を減らし、エコシステム(特に水)を回復させ、化石燃料から派生する化学肥料や強い殺虫剤や除草剤の使用やニーズを減らすため、環境に配慮した農業と総合害虫管理を行えば、農業エコシステムは最も貧しい社会でさえ可能性はある」

 移行への障壁は政治的なもので、技術的なものではない。これらの技術は、農業市場を支配する種子、農薬及び肥料の特許独占企業だけでなく、グローバル農業ビジネスや商品取引及び加工企業にも異議を申し立てることになる。

 そして「グレイン」が述べるように、COP21に向け、「気候変動と農業に取り組む主要政府間イニシアティブは一つしかなく、それは昨年ニューヨークで気候変動に関する国連サミットで立ち上げられた「気候スマート農業のためのグローバル同盟」で、世界最大級の肥料企業によって支配される。そして「企業スマート農業」自体が法人である。

 農業が未だに政府間の気候会議の議題になっていないのは、農業ビジネス企業が利益を食料自体の生産から派生させる方法を特定できたからで、それは食料制度の気候変動における役割に取り組み逆転させる上で異議を唱えなければならない危険な神秘化である。

 課題の重要な部分として、安全な生活と労働環境、身体と生命に危害を与える有毒な化学物質の排除、飲み水、雇用の確保と生活賃金を求める農業労働者を支援することがある。これらの要求は、小規模生産者が土地、水、政治的且つ財政的支援を求めるのと同様、持続可能で気候に優しい食料制度のために不可欠な闘いである。

 1980年以降、人間の活動が原因で気温が1度上昇し、南極の氷の80%を溶かした。我々がもっと効果的に対応しない限り、さらに2%以上食い止める方法をCOP21 が採択及び実施できる可能性は低い。地球温暖化の巻き添え損害の被害者としてなく、問題の原因及び解決に不可欠な要素として、議題の最初に食料制度を載せる時である。