Home

公判中のモンサント

09.08.18 Editorial
Printer-friendly version

Stopglyphosateサンフランシスコのカリフォルニア連邦裁判所では、ドウェイン・ジョンソン氏がモンサントに対し訴訟を起こしてから2年半が経過し、今公判中である。ジョンソン氏は2012年に、学校の校庭整備員の仕事を開始したが、彼の担当医は、彼がそう長くは生きられないだろうと考えている。彼は仕事でグリホサートを有効成分とするモンサント社の「ラウンドアップ」という除草剤を定期的に散布していた。2014年、42歳の時、彼は稀な血液のがんである「非ホジキンリンパ腫」だと診断された。

この訴訟は多くの点で異例である。裁判長は、陪審員が評決を下す前に、この商品の潜在的な有毒性を隠そうとしたモンサントの企てに関する証拠の検討をしてもよいと定めていた。ジョンソン氏のケースに限らず、アメリカの法廷では、グリホサートに晒されることで非ホジキンリンパ腫を引き起こしたと主張する訴訟が約4000件に上る。実際、農薬を販売する主な企業はすべて、グリホサート製剤を販売している。そして今やモンサントは、完全に独バイエルの傘下にある。従って、グリホサート製造企業にとって、潜在的な責任の範囲は莫大である。

ジョンソン氏は訴訟で、モンサントがグリホサートの有害な影響について「改ざんしたデータを擁護し正当な調査を非難」し、政府や消費者、農家に製品が安全であると納得させるため、「誤情報の長期に渡るキャンペーン」を誘導した、と主張している。

モンサントは、1970年代に初めてグリホサート製剤が商品化されて以来、それが無害であると宣伝してきた。そのプロモーションは、1990年代に同剤への耐性を付与した同社の遺伝子組み換え大豆、コーン、綿、菜種(キャノーラ)、甜菜等の品種の導入により同剤の販売が飛躍的に伸びた時に強化された。しかし、その誤情報キャンペーンは、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)が2015年3月に  同剤を「おそらく人間に対する発がん性がある」と分類した後、最高潮に達した。

20173月、ジョンソン氏の事務弁護士が入手した同社の内部文書が、公判前手続きで公表された。これらの文書は、20176月に「ル・モンド」によって発行された「ザ・モンサント・ペーパー」という調査報告書のベースになった(英語版を閲覧するには ここここをクリック)。 また同年8月にはさらに別の文書が暴露され、公表されたここで閲覧可能)。

拡散された「モンサント・ペーパー」は、科学・農業科学・食品産業やそのロビイストと繋がるプロパガンダ組織、偽装団体、右傾「シンクタンク」のネットワークを通じて、IARC活動の信用を傷つけ最終的に資金と運営を停止させるために、潤沢な資金を用いた組織的活動を証明した。同社はさらに独立した科学者を脅し、アカデミックな雑誌にゴーストライターの記事をばらまき、あらゆるレベルの規制機関を威嚇し、掌握しよう(何度も成功した)とした。トランプ政権の出現により、米国環境保護庁は、労働者と消費者の保護と環境規制の根絶を約束し、キャンペーンは公衆衛生、毒物学とがん研究に関するより広範な非難へと広がった。モンサント・ペーパーは、グリホサート事業と我々の職場や生活に蔓延している他の毒物の規制と闘う企業活動の間の組織的な結びつきを追跡する。 


モンサントは、ターゲットとする攻撃範囲を広げ、市民社会の批評家を沈黙させようとしている。今年の前半、モンサントに反対する同様のアメリカの訴訟に関連して、モンサントの弁護士は、オンライン・キャンペーンの機関Avaazに、同社やグリホサートに関係する内部やり取りを「洗いざらい」提出するよう要求した。

 

欧州議会は昨年10月、モンサント・ペーパーの第一部を踏まえてEUの規定のレビュープロセスを評価するため、特別な公聴会を開いた。それは、1ヶ月後のグリホサート使用の再承認を阻止するのに十分ではなかった。パブリック・ドメインにある新たな同社の文書を携え、欧州及び世界で再度公聴会を開く必要がある。